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ミドリカワ書房



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ミドリカワ書房

銭湯の思い出

作詞:緑川伸一
作曲:緑川伸一

湯船で僕らが騒いでいると いつもおじさんに怒鳴られた
「うるせーなガキども!」坊主頭でプロレスラーみたいだったおじさん

おじさんのでっかい背中には綺麗なカッコいい絵が書いてあって
それはお尻にまで届く程の 大きな大きなものだったんだ

ある時「おじさんの背中綺麗だね」と言ったら
「バカヤロー綺麗なもんか」と照れるように背中を隠した
それが刺青というものだったという事を 知るのはだいぶ後になって

おじさんには娘さんがいて いつも一人外で待っていた
僕らは湯上がりの体を冷ましつつ 女の子の様子を観察した
おじさんが出て来ると女の子は コーラを一気に飲み干して
おじさんのぶっとい腕に掴った 母子家庭の僕は羨むばかり

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あんなお父さんがいたらなあ 二人を見ながらいつも思った
女の子の手を引きながらダミ声で歌ってた歌が
「人生を語らず」という歌だったという事を 知るのはだいぶ後になって

中学生になって僕らは 銭湯に行かなくなってしまった
そしてあの女の子と同じ学校になるとは まさか思ってなかった
そもそも同い年だったとは 何だか大人っぽく見えたから
テレビに出て来る女優さんのような 彼女に僕は夢中になった

僕は想いを打ち明けて 運よく付き合う事が出来た
「あんなお父さんがいたらなあ」というあの頃の夢が
23になる春に叶うんだっていう事を 知るのはだいぶ後になって

今でもお義父さんとはたまに 銭湯に行く事がある
背中の絵は少し萎んでしまったが やさしい笑顔とダミ声ははあの頃のまま